若い社員を中心に
カフェのメニューをつくった話

若い社員を中心に
カフェのメニューをつくった話

廣榮堂の直営店には、お客さまが憩えるカフェスペースを設けた店舗があります。多くの観光客で賑わう倉敷雄鶏店(ゆうけいてん)、地元の常連のお客さまが集う藤原店など、それぞれのカフェを企画・運営するのもスタッフの重要な仕事。そこで、和菓子屋のカフェならではの新しいメニューづくりに挑んだ先輩後輩のふたりに、話をきいてみました。

お話をお伺いした方

社長室 経営特区(現在)

小西祐貴

2014年入社
岡山県出身

倉敷雄鶏店 副店長(現在)

山本聖子

2006年入社
岡山県出身

和菓子屋でカフェメニューをつくろう、となったきっかけは?

山本:もともと、店内にカフェをつくるアイデアは「お菓子を通じて幸せな風景をつくりたい」という会社の方針から生まれたものです。そこでカフェの企画・運営も、社内スタッフで自ら行うことになりました。淹れたてのコーヒーや抹茶と一緒に廣榮堂の和菓子をご提供するなかで、和菓子屋のカフェならではのオリジナルメニューも味わっていただけたら、という発想が自然と生まれたのだと思います。

新名物となりつつある「きびだんごパフェ」もそのひとつですね。

きびだんごパフェ

廣榮堂の代表的な和菓子「きびだんご」から生まれたカフェメニュー。京都・宇治抹茶を使った「きびだんごパフェ〜抹茶〜」に始まり、秋にはかぼちゃアイスを使ったハロウィン版も誕生。季節ごとのバリエーションを楽しめるようになりつつある。

小西:お子さまからご年配の方まで楽しめるもので、かつ廣榮堂らしいカフェメニューとはどんなものだろう、と考えるなかで思いつきました。でも最初に僕から「きびだんごパフェ」をみんなに提案したときは、なんだか微妙な空気が流れましたね(笑)。

山本:きびだんごは廣榮堂の顔といえる歴史の長い和菓子で、きっと「そんな大胆なことをしていいの?」という気持ちが多くのスタッフにあったんですね。私は入社して10年近いこともあって、余計におそれ多い気持ちがありました。廣榮堂に入社したばかりの小西君だからこそ思い付けたのかもしれません。

長く受け継いできたものについて、時代に合う愛され方を考える上では、どちらの視点も大切になりますね

小西:そうですね。僕は最初「なんでこれをしないの?」くらいの勢いで考えていましたが、いざ作るとなると、ブランドを大切にしつつ新しいことに挑戦する難しさもありました。お客さまは何を求めてこの店に来てくれるのか先輩たちと何度も話し合い、一緒に考えていきました。レシピづくりは閉店後のキッチンを使い、チームでいくつも試作を繰り返しました。そうして時間をかけて生まれたパフェが好評をいただいたときの嬉しさは、今も記憶に残っています。

倉敷雄鶏店では、近くにある大原美術館の展示品をモチーフにしたコラボメニューもシリーズ化されていますね。

大原美術館コラボレーションメニュー

大原美術館は倉敷雄鶏店のすぐ近くにある、日本最初の西洋美術中心の私立美術館。2014年から同館の協力を得て、収蔵作品であるピサロ、セガンティーニ、児島虎次郎らの名画をモチーフにしたオリジナルのスイーツを考案・提供している。

山本:これは店内のカフェが、美術館鑑賞後の余韻にひたれる場にもなればという現社長の発案から生まれたものです。たとえばカミーユ・ピサロの名画《りんご採り》をイメージして、キャレ・オ・ポム(四角いりんごパイ)と紅玉ムースを組み合わせる、といった具合ですね。ピサロがフランス出身ということで当地のキャレ・オ・ポムに挑戦するなど、毎回、社内の和菓子職人とも相談しながらメニューづくりをしています。

小西:一方で、地元密着型の藤原店では、常連のお客様が楽しめるランチメニューに力を入れています。岡山県産もち米を使った「蒸篭(せいろ)蒸し五目おこわ」や、「米粉の煮麺」などがあります。これには、お店ごとの個性に合うメニューづくりも大切だ、という考え方が根底にあります。逆にいえば、そうでないとお客さまにも受け入れていただけないと思っていて。その中で、きびだんごパフェによって若いお客さまが増えたり、観光で訪れた方がカフェのメニューを気に入って何度も来てくださるようになったり、新しいつながりが生まれることも本当に嬉しいです。

小西さんのアイデアでは、「ロング調布」も行列ができる人気になりましたね。

ロング調布

廣榮堂定番の和菓子である「調布」は、なめらかに仕上げた求肥を、香ばしい薄皮で優しく包んだもの。ロング調布はこれを長くしたもので、雄鶏店の実演コーナーで作りたてを販売すると、予想以上の人気となった。

小西:やはり観光地なので、お行儀が悪くない範囲で気軽に食べ歩けるお菓子があるといいかも、と考えたのがきっかけです。「調布」の実演販売スペースであと片付けをしていたとき、ふと「これ、長くしたら面白いかな?」と思い付いて……。

山本:小西くんはそういう、どちらかというと奇抜な企画が得意ですよね。私はすぐ考え込んでしまう質なので、小西くんみたいな元気なタイプと一緒だと、互いに励まし合えるのがありがたいとも思います。

メニュー作りも適材適所、やはりチームプレイが大切?

小西:そうですね。僕が考えたものも、自分はお菓子づくりや料理が得意なわけではないので、製造部門のスタッフや、先輩である山本さんたちの力をたくさんお借りして実現できたものが多いです。また、メニューの考案は料理そのものだけでなく、それをお客さまに紹介する「ことば」など、届け方を考えるのも大切だとわかってきました。

山本:先ほどの美術館とのコラボメニューでは、社内の和菓子職人が実際に美術館を訪れ、その作品を目の前で鑑賞して……という手順をふむこともあって、部門を越えてそうした協力ができる関係性もありがたいと感じています。そういう、社員同士がどこか家族のような人間関係でいられるのは、私にとって嬉しいことですね。

最後に、今後はどんな仕事をしていきたいですか?

小西:今は新規事業などを担う社長室に所属していますが、カフェメニュー作りには引き続き関わっています。昨年は海外展開に向け、シンガポールの百貨店で即売も経験しました。もともと、入社時には営業をしてみたいと考えていました。良いお菓子があり、お客さまがいて、それを自分の力で届ける仕事がしたかったんです。今していることもそこにつながっていると感じています。

山本:カフェのメニューづくりでは引き続き、頻繁に小西くんたちと顔を合わせていますね。倉敷雄鶏店は観光で訪れるお客さまが多いのは先ほどお話した通りですが、今後は、この美術館を中心とするアートの町倉敷で、地域により密着したお店になっていきたい考えています。昨年から、近隣の幼稚園のお子さんたちとクリスマスのオーナメントづくりをする試みなども始まっていて、これからもじっくり続けていけたらと思います。